Homare's Diary

組織人事コンサルタントの徒然日記です

宮城先生との対話

久しぶりに宮城まり子先生とお話をする機会がありました。クライアント企業のキャリアカウンセリング室の設置に際し、客観的な立場からの意見と支援をお願いする目的で担当に引き合わせする段取りを作ったのです。


とはいえ僕は宮城先生の教え子でも、何かつながりを普段から持てているわけでもありません。


以前もそうでした。2011年の冬のこと。法政大学の研究室を訪れ、定年延長を行うにあたりクライアント社員に対してキャリアを自ら考え、創っていくことの必要性について、先生のビデオメッセージが欲しいのだというお願いをしに行きました。先生は心よく応じていただき、僕はインタビュアーとして先生と1時間半あまり個別にインタビューをしました。


先生の言葉を社員の状況と人事部の思いも踏まえて引き出していくインタビュー役。とはいえ特に気構えることもなく、対話は自然に行いました。カメラが回っていることも気にせず、時間はあっという間に過ぎていきました。とても貴重で有意義な時間でした。独占して僕だけが話を聴けるのですからね。


終わった後、いつも厳しかったリクルートの上司がぽつりと言いました。
「お前はインタビューが上手いな・・」


収録された映像は、1.6万人の社員が見ることになりました。あれから時は過ぎ、その時のことを先生は覚えていました。時間はかかったけど、研修は世代別に作り上げようやく、キャリアカウンセリングをやろうとグループ全体が動いてきたのだ・・と。とはいえ、まだまだ様々な意見が出ている。今日は先生の考えをフラットに聞きたいのだと。

 

・働きがいを向上させていく、メンタルなどの問題は「キャリアの悩み」が根底にあることが多く、この問題に対応していくためにはキャリアカウンセリングの設置は必要不可欠である

・キャリアカウンセリングを行うにあたっては、外部のプロの人材を活用することも手ではあるが、社内の事情に精通していない人が相談に対応すると相手の主訴の理解にも時間がかかるし、適切な対応も取れない。よってカウンセリング体制の構築においては「社内の人材」を主軸に考えていくべきである

・「社内の人材」でカウンセラーを組成していく際に大事なのは、「人選」と「継続的な学習(スーパービジョン)」。

・「人選」は、社内の人から自分の状況が分かる、この人なら相談してみようという気持ちにさせてくれるロールモデルとなるような人をカウンセラーにおくべき。女性特有の問題に対応するには女性のカウンセラー置く、企業によっては職種別に置いているケースもある

・カウンセリングはとにかく経験を積ませていくことで習熟させていくのが一番の方法である。最初からプロのカウンセラーはいない。だが、経験を積ませるとともに自分の癖を矯正していくための継続的な学習(スーパービジョン)が大事になってくる。これがないと独りよがりのカウンセリングになって信頼を失ってしまう

・社内カウンセラーの養成にあたっては、社内養成講座でインスタントに育成するよりも国家資格の取得を前提とした公開講座で学んでいくことを本来はお勧めしたい。カウンセラーとしての体系的な知識、実技のみならず、社外の人脈も広げていける有意義な機会になるはず


高名な先生と話をするなんて緊張する・・と言っていた担当者も柔らかで話しやすく、一方で軸のハッキリとした意見を述べる先生のスタンスに感心しきり。道を究める人というのは、いつでもドアを開けてくれているのだ・・と僕は思ったのでした。