Homare's Diary

組織人事コンサルタントの徒然日記です

人生・仕事に自分の指定席を作れ

大学時代は、本田宗一郎さんに関わる様々な書籍を読んだ。ただ読むのじゃつまらない、自分の考えも踏まえてまとめてみようと思い卒論のテーマにもした。


会社研究から始まり、礎を作った本田宗一郎さんの歩みを追う事は、小説を読むより興味深く、有り余る時間を没頭させてくれるに相応しいテーマだった。生い立ち、人物史が経営哲学となり戦略、組織に繋がり企業史が形成されていく。僕は無機的な側面からモノを見るよりも、一人の人間の価値観や思いという側面から会社を見ていくのが好きだったりする。そういえば、最近朝ドラにも創業者の物語が扱われることが多い・・


就活時も卒論の事をよく話していた気がする。体育系・文化系を掛け持ちした部活動のことも、様々なアルバイトのことも話すことはほとんどなかった。この卒論に興味を示してくれた企業は多く、そうした所からはほぼ内定を頂くことが出来た。自分をアイデンティファイし、職業人生のパスポートにもなったのだ。


本田宗一郎さんは己の考えを明確に持ち、多くの書籍を記している。数多読んだ中でも好きなのは「得手に帆あげて」。記されているのは、「生き方・働き方」の哲学。


・「得手に帆上げて」
・「能ある鷹は爪を出せ」
・「会社のためにではなく自分のために働け」
・「会社・仕事に自分の指定席を作れ」


どれもが革新的で強烈なメッセージである。


核にあるのは、人間にはそれぞれ異なる才能という資本が隠れている。それを活かしていくことこそが、周りを幸福にし自分自身も幸福になるのだ、という揺るぎない考え。今でいえばタレントマネジメントの根本原理である。


これは、ホンダフィロソフィーである「人間尊重」に繋がっている。だがこれは一企業の枠を超えた普遍的な考え方。優れた企業のフィロソフィーには、人間という存在の捉え方やキャリアに関する考えが織り込まれているのは、現在キャリアをメインテーマに据えている人間から見てなんとも不思議な繋がりを感じるものだったりする。


もし、一人一人が得手に帆を挙げ、自分の指定席を作れたのなら、どんなに素晴らしい世の中になるのだろう・・実際には多くの人が、得手を知りえておらず、指定席を見いだせていない。そして、肩書や権力を指定席として求めようとするからおかしな話になる。そもそも、肩書や権力なんてものは、その組織から離れたら無くなってしまうもので、人生・仕事の指定席にはならないのだ。


ドラマ「エール」においても、主人公の人生を決定づけた小学校の担任教諭の素晴らしい言葉がでてくる。


『ほんの少し努力するのが辛くなくて、ほんの少し簡単にできること。それがお前の得意なものだ。それが見つかればしがみつけ。必ず道はひらく』


組織人として何十年も生きていると、得手に帆を上げることや指定席を見つけることはかえって難しくなってしまうのかもしれない。だからこそ学生時代にどれだけその種をどれだけ意識できるか。僕においては、大学の指導教授が僕の卒論を高く評価してくれた存在でしたから。