自分にとって最も大切なものを失う。だが、失うことなくして得られるものは何もない。得られるものが何も見えていなくても、まず犠牲を払わなくてはならない。
ユダヤに伝わるタルムードに書かれているNo pain , no gain の法則。ここでは、魔法のザクロという寓話で法則が語られています。
10年間世界を旅し修行した上で、一番不思議なものを見つけて持ち寄ろう、と約束した3人の兄弟。
一人目はすべてを見通すことのできる硝子のコップ
二人目は空を飛ぶ絨毯
三人目は沢山の花をつけているのに一つだけしかなっていないザクロの実。手に取ろうとすると独りでに手に落ち、残りの花も実に変わってしまう。でも、その実を得ようとしたら、全てが消えてしまった。これは不思議だ…と一つの実を持ってきました。
戻ってきた兄弟が、硝子のコップで世界をのぞくと、病に苦しんでいる姫を助けてほしいと懇願する王が目に入った。そこで、空飛ぶ絨毯で3人は現地に赴いた。そして、ザクロの実を半分姫に与えると病気はたちまち治ってしまった。
王はいいます。3人の中でどなたかを姫の婿として迎えよう。それぞれで相談して決めてくれ…と。
そこに姫は割って入り、一人一人に質問をします。
私の病気を見つけた硝子のコップは何か損なっていませんか? -いいえ、何も。
私のところに飛んできた絨毯は何か損なっていませんか? -いいえ、何も。
私を治してくれたザクロは何か損なっていませんか? -姫に半分を与えたので半分しか残っておりません。
姫は言います。私のために大切なものを失ってしまったザクロを与えてくれた方と私は結婚します…と。
これは成功哲学という側面で語られることが多いですが、成長哲学の側面もあると捉えています。大きな成長においてはリスクの高い挑戦が必要だからです。
大きな挑戦をすれば、大きな成功も時についてくるかもしれません。でも成功はあくまで可能性です。
でも、成功よりも自分に埋もれていた可能性を引き出すということが、生きていくことの使命だと思うのです。マザーテレサもいっています。
神様が望んでいるのは、成功することではなく挑戦することなのだ…と。
本田宗一郎さんはこうもいいます。
困らなきゃだめです。人間というのは困ることだ。絶対絶命のときに出る力が本当の力なんだ。人間はやろうと思えば、大抵のことは出来るんだから。
失敗もせず問題を解決した人と、十回失敗した人の時間が同じなら、十回失敗した人をとる。同じ時間なら、失敗した方が苦しんでいる。それが知らずして根性になり、人生の飛躍の土台になる。
だから、たとえ光が見えなくても住み慣れた楽園を捨てて挑戦することには価値があるのだと思っているのです。