人の意見や発表を聞いたときに、うまく言語化はできないのだが何か違和感がある、そもそも何を言っているのかよく分からなかったりする・・
そうした時にどのような態度をするか。相手を気分悪くさせたらまずいので、ひとまずそこは無難に「平素を装って」対応しておこう・・なんて考えていやしないだろうか。
この態度はコンサルタントとしては厳禁だったりします。でも組織人事系に属する方は、どちらかというと対人感受性が高い方も多く、とかく相手の反応を慮るが余りに異を唱えないという人も多い。そもそも、日本人は相手の意見に対して異論、反論を唱えることが苦手な国民であったりもします。(アサーティブコミュニケーションができないと言われています)
2つの経験から、僕は異を唱えていくことの重要性を学びました。一つ目は、新卒同期であった女性達からでした。
プライスウォーターハウスの新卒同期は23名。女性は7名でした。そして彼女たちの特徴は明確な自分の軸を持ち。相手が誰で、どんな場であっても自分の意見や違和感をしっかりと口にすることでした。
例えば、研修のグループワークを進めていても、何か納得のいかないことがあると「何か気持ちが悪い・・」と表して流れを止めるのです。それは同期だけの時ではなく、上役のトレーナーを交えた場でもそうでした。普通は、「空気を読んで」流れを妨げる行為は自重するものです。でも、彼女たちは「気持ちが悪い」というマジックワードを多用して、再考すべきであるというメッセージを送ってきたのです。
そんなに言うなら・・と皆が渋々考えに付き合っていくと、違和感がだんだん言語化されていきます。そうそう、これが私が言いたかったことなのよ・・・と。無論、この芸当は誰もが出来ないかもしれません。そもそも、考えの深い彼女が違和感があるなら、何かあるに違いない・・という信頼感もあって成立するからです。
でも、彼女たちは最初からそんな態度だった気がします。そこに対して「我がまま言っているんじゃないよ・・」と言わない上司・同僚。皆でとことん考え抜く。これが僕の求めている真の平等・自由な職場なのだ・・と思ったものです。そして、違和感があれば理由や言語化を上手く出来なくても、止めていいのだと思ったものです。(日系の序列組織は肌に合わないと考えてましたから)
二つ目はリクルートとのJVで体験した「内部ミーティング」でした。
30前半だった僕は、N経営研究所に属しており、新規事業開発支援を行うプロデューサーという立場でした。JV相手のリクルートからは、一緒にやる以上はミーティングへの参加はどんどんやってくれ・・と言われ参加したのですが。ミーティングでは皆さん意見を言いまくりです。メーリングリストでも自分の意見をガンガンいうのです。
「俺たちは”唾液”が普通の人と比べて多いんだよ。だから、メールサーバーの容量があっという間に想定以上になってしまったらしいんだよ・・」とカウンター組織のGMは言っていました。そして、「ズケズケモノを言わなきゃダメなんだ。お前は物怖じしないから見込みがあるぞ・・」などと言われたものです。
面白かったのは、相手の意見や発表が難しくて分からないと、「すんません、俺馬鹿だから何言ってるか、分からないっす!!」と表明する人たちがいたということです。確かに、一見高尚なことを言っているようで見えて、何を言っているのか分かりづらい。そこに対して素直に表明する。周りはどっと笑う・・発表者は説明のし直しです。こういう素直なコミュニケーションは実にすばらしいなと思ったものです。
「不勉強なモノで・・」「物わかりが悪いのですが・・」と頭につけて分からないことを表明すれば、角も立たないしそのお陰で助かる人も多くいる。ちなみに、俺馬鹿だから分からない・・と言っていた人は、全然馬鹿な人ではありませんでした。(学歴もキャリアも)
僕がリクルートで学んだことの一つは、頭の良い人が馬鹿のふりができる、馬鹿になれることの凄さでした。一方で、賢いふりをして自分の頭でモノを考えていない集団というのは極めて弱い・・ということでした。
分からないこと、違和感というモノを表明するというのは、自分の頭で真剣にモノを考えている、関心を持っているということの証です。ハレーションや馬鹿とみられることを恐れず、上辺だけの頭のいい人を目指さないで欲しいな…と。スタッフにはいつもそう願っているのです。