Homare's Diary

組織人事コンサルタントの徒然日記です

起業の天才

リクルートに関する書籍には昔から多く目を通している。創業者自伝、OBの著述、仕事術、ノウハウ系etc..新刊の「起業の天才」も早速読んでみた。


読み始めのきっかけは、30代の時に在籍していたNTT系シンクタンク労働市場分野における新規事業開発コンサルティングがきっかけだった。当時、労働分野で新しいサービスを立ち上げるなら、リクルートをパートナーにするのが近道ではないか・・とうっすらと思っていた。ワークスの論文を読むにつけ、その想いは確信に近いものになっていた。都合のよいことにクライアント企業は、リクルートの株主でもある。


事業構想を話したところ、リクルートもパートナーを探していた、ということで僕はスポンサー企業とリクルートを繋ぐコーディネーターとして彼らの活動に深く関与することになった。G8の月曜日の定例朝会には毎週参加したし、ブレストにも呼ばれた。飲みの会にももちろんつきあった。彼らのことを理解するために、片っ端から書籍には目を通した。江副さんのエピソードも多く聞かせてもらった。


元々の気質もあったのだろうし、彼らの文化、DNAというものを積極的に理解しようという姿勢もあったのだと思う。門外漢の僕はオールドリクルートの方に可愛がってもらった。僕自身も彼らと新しい事業を作ることに大きな意義を感じていた。もしかすると、事業の意義ということより、彼らと一緒に働くことが極めて刺激的で愉しかったからなのだと思う。


新規事業という「祭り」はいつかは終わる。4年の月日が経ち、合弁事業は発展的に解消。僕は戦略から組織人事コンサルティングに大きくキャリアを変えた。


「おまえは何をしたいんだ」「それの何がうれしいんだ?」
「おまえは人や組織を相手に仕事をするのがあっているんだ。なぜならな・・」


社外の人間にもかかわらず、何度も受けた問いかけ。


人の意思を引き出し、人を変える力は僕においても働いた。その後、幾星霜を経て僕はリクルートで新規事業の立ち上げメンバーとして参加することになった。


最新刊『起業の天才』にも、知っている方々のエピソードが随所に登場する。綿密な取材に基づき、創業者とリクルートという会社を立体的に浮かび上がらせた著書。2日で一気に読むことが出来た。


読んでいくと、僕がNTT系の会社に在籍したことも含めてNTTとリクルートのリレーションがかなり以前からあったことに気がつかされる。そして、改めて感じるのは「時代を先取りした着想」と「個を生かす経営」。僕の今いる会社は同じ人材サービス会社ではあるけど、DNAが全く違う。模倣をしたくても出来ない。たぶん、その違いについて分からない人は永遠に分からないだろう。人事制度からしてまるで別物だしね。


変化、成長を誰よりもしたいと考えている人材を引き寄せ、化学反応を起こすことで組織を成長させていく風土。ソーシャルキャピタルを形成するHRMを中心としている企業戦略。同じような会社は日本企業にはなくて、Googleなんだよね。


惜しむらくは、嵌められたともいえるリクルート事件と緊縮財政の中で経営の舵を握った河野氏の時代。これがなければ、今よりもさらに大きな存在になっていたのではないかと思う。そして江副さんが「虚業」との揶揄から「本当の虚業」である土地の錬金術という泥沼にはまってしまったこと。自身の行っている事業の評価を周囲の意見に惑わされずに行うことは難しい。コンプレックスというものは原動力にもなるし、せっかく見つけた「道」を踏み外させる魔力があるのだよね・・