音楽隊の演奏が好きで、日比谷公園に機会があると聴きに行きます。そんな音楽隊をテーマにした『異動辞令は音楽隊』。コンプラを無視した厳しいスタンスの捜査が信条の主人公が、左遷ともいえる異動辞令を受けたのが警察音楽隊。
阿部寛さん演じる主人公は、幼少時代に和太鼓の経験があるという以外は、音楽に関してはズブの素人。そんな主人公が30年の刑事キャリアから、パーカッショニストとしてトランジションしていく葛藤とそれを支援する周囲との交流を描いたヒューマンドラマ。
孤高の刑事で、家庭生活も破綻。娘とも心を通わせられない。シングルマザーの同僚である清野菜名さんが演じるトランペッターとの出逢いにより、周囲の人間との交流を恢復していきます。
猛特訓を積んだ阿部寛さんの名ドラマー振り。娘さんとのセッションや清野菜名さんとのセッションシーンがグッと来ます。
喪失感から怒り、虚無感という葛藤を乗り越えた主人公。孤高の刑事から、いつしか様々な人々を繋げる中心的な人物に変わっていきます。
音楽の力とともに、キャリアトランジションの過程や大事さを教えてくれる素敵な作品。味のある阿部寛さんは勿論のこと、凜とした清野菜名さんの演技も光りました。異動や役定を抱えた中高年男性には、キャリア教育教材としても見てもらう価値ありです。