不確実性が高く変化のスピードの速い環境においては、精緻に環境を分析して正解を求めることなどできやしません。仮に『正解』というものが誰かによって導き出されたところで、そこに対する意味解釈は人によって多義的になる。その状態のままで集団が力を発揮しうることはあり得ない。
そこで求められるのは、環境に対する多義的な解釈を揃えていくこと。すなわち大まかな方向性を示し、、そこに意味を与え納得性のある言葉で人を動かす『ストーリー』。このストーリーによってセンスメイクされた集団は、迷わず足並みを揃えて行動をしていくことになる。それは、当初は思いもかけなかった結果をもたらす。未来を創り出していくためには、分析しつくした正解ではなく、集団をメイクセンスし動かしていくストーリーが大事なのである。
上記がセンスメイキング理論なのですが、この理論は人の持つ可能性、信じて行動することの生み出す力、信念、哲学を内包した考え方であることが非常に興味深いわけです。
この考え方を見ると小林秀雄さんの『命の力には、外的偶然をやがて内的必然と観ずる能力が備わっているものだ。この思想は宗教的である。だが、空想的ではない。』という一文がオーバーラップするのです。そう、センスメイキング理論はかなり宗教的、哲学的な側面を持ちます。
社会科学の世界とはいえど、人間や普遍的な真理を求める姿勢が必要なのだなと思わせられます。そうでなければこうした理論は出てきませんから。