Homare's Diary

組織人事コンサルタントの徒然日記です

西御門サローネでの話

雪になりそうな寒い日でもあり、鎌倉八幡宮の北東に位置する西御門サローネに先客はなく、ストーブを焚いた暖かなダイニングで初老の館長さんは里見惇さんや鎌倉の事について色々教えてくれました。


・鎌倉というのは昔から住んでいる人がいる一方で、華族や富裕層といった高い人たちが住む場所だった。また、戦前は海軍将校が多く住んでいた(僕の借家の前の持ち主もそうだ)。横須賀線で東京まで出ることが出来る便利な場所で、海があり山もあるため保養地には最適な場所ということらしい
・戦後は鎌倉の立派な家はGHQに接収されて士官の邸宅やホテルになっていた。西御門サローネもホテルになっていた(小規模ながら軽井沢万平ホテルのような雰囲気が残っている)
・鎌倉山は不便な場所にあるが戦後は米軍が接収していたので、電気、水道、ガスといったインフラがしっかり通っている

・戦後は太陽族と呼ばれるやんちゃな若者たちが鎌倉を多く訪れたが、石原慎太郎は地元できわめて評判が悪く、横須賀が地元の小泉慎一郎も鎌倉で女性がらみのトラブルを起こしており、地元では彼奴が首相になるなら世も末だと言っていた
・里見惇さんは、薩摩藩にルーツを持つ官僚の息子で、学習院だった。そこで、志賀直哉、武者小路実篤などと出会って白樺派を作った

・白樺派を離れた後は、小津安二郎さんと仲が良く小津さんの映画のイメージは里見惇さんの原作によって作られた作品も多かった
・鎌倉は大船撮影所が近かったことから、映画俳優が食事をよくするレストランも多かった。中井貴一さんのお父さんの佐田啓二の奥様は撮影所近くのおそば屋さんの娘さんだったそう

 

・邸宅は和の設計ながらも、初代帝国ホテルのライト建築を模して取り入れたものが随所にある。アプローチの階段であったり、階段の吹き抜けから見えるステンドグラスなど

・里見惇さんは大阪の南で置屋の娘と結婚し、身分で差別をするような人ではなかったが、邸宅にある使用人の部屋というのはやはり相応に貧相な作りになっている。

・離れになっている数寄屋造りの茶室は京都から大工さんを呼んで作らせたもので、茅葺きの屋根に白樺の天井などかなり凝った作りになっている
・トイレは浄化槽を備えた水洗式のものを当時から採用していた

・この邸宅を離れて里見惇さんは長谷に住むのだが、関東大震災の津波の影響で海抜の低いところは根こそぎ被災した記憶があったからだと思う

 

館長をしている方は、東京オリンピックの時から鎌倉に住んでいるそうですが、この地域の歴史や文学、映画に詳しかったですね。やっぱり、里見惇さんの作品や小津映画とか見ていると話の味わいがもっと分かるのでしょうね。


その西御門サローネの側にある、邸宅を喫茶店にしたカフェ。前を立ち寄ったところ週末しかやっておらず、気になって翌日に寄ってみました。そこは、古いパイオニアのステレオセットがおいてあり、もっぱらビートルズをLPで流しています。入り口には巨人の高橋由伸さんが送った植物があり、店内には野球のバットなども飾られています。


初老の夫婦と息子さんの3人で経営しているのですが、息子さんが交通事故に遭って働けなくなったことから鎌倉でお店を開いたのだそうです。後で調べてみると、息子さんは慶応高校で甲子園に手が届くところまでいき、大学野球では高橋由伸のチームメイト。社会人で明治安田でプレイをしていました。ですが、37歳の時に彼を不幸が襲い、飲酒運転の車に20mも跳ね飛ばされ、意識不明で瀕死の重傷を負ったそうです。一命を取りとめたものの、脳に高次機能障害と左半身不随となり、ご両親と鎌倉でカフェを開いたのだそうです。


マスターは、あまりこの店は宣伝をしたくないらしく、ガイドブックなどや取材などは一切お断りしているそうです。とはいえ、大河ドラマなどでロケ地となると多くの人が来ることになり、なかなか大変なのですよ・・なんて話していました。


リーズナブルですし、ビーフシチューがとても美味しいのです。テラス席も素敵で暖かくなったら来てみたいところ。しかし、ここに住む人にはそれぞれ人生のエピソードがあるのですよね・・


時間の流れがのんびりしていて人との距離感が近いので、仕事に関係のない知り合いが増えます。そんなことがSHONAN TIMEという雑誌に書かれていましたが、確かにそうですね。

 

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