Homare's Diary

組織人事コンサルタントの徒然日記です

Connecting the Dots.

I社は難関大学の就職希望ランキングの上位を毎年占めている人気企業だ。だが、希望通りの就職が行えた若手社員たちがさぞかし毎日を楽しく働いているかというとそんなことはない。

 


キャリア研修を受講する彼らに聞いてみる。

『君たちは週末が終わり、月曜日が待ち遠しいか?』

 


誰も手が上がらない。お互いに顔を見合わせて苦笑い。『この会社を希望して入った人は?』

 


3/4くらいの手が上がる。難関をくぐり抜けてきた選りすぐりなのだ。じゃあ、なぜ待ち遠しい気持ちになれないのか、その理由と楽しく働いていくための機会としていきましょう…として研修を始めていく。

 


先の見えない彼らに、活躍する40代社員8人のキャリアチャートとインタビュー記事を読んでもらう。注目してもらうのは、彼らのキャリア曲線において20代は一様にマイナスに振れている点。若手においては、理想と現実の乖離が誰でもある。やるせない状況を打開する力も経験もない。

 


『柔道を習ったことがある人はいますか?』

ぱらぱらと手が上がる。

 


『最初は何を習いましたか?』

 


『受身しか習わなかったよね。今は投げられるばかりで、投げ技なんてかけることができない。ただし、受身をマスターすれば、攻撃に繋げていくことができる。仕事における受け身の型が"ジョブクラフティング"だ。受け身から攻撃に転換していくときに、先輩社員が発揮していた力が"ジョブクラフティング"なんだよね』

 


『理想のキャリアなんて描けなくていい。過去を振り返ってジョブズが言っていた「Connenting the Dots」に向けとにかく点を打っていけばいい。多ければ多いほど可能性が拡がる。それを信じて進んでいくんだ。先輩たちだって、振り返って思いもよらぬ経験が役に立ったと言っているじゃあないか…

 


ジョブズのConnecting the Dotsは僕が好きな哲学だ。ジョブズがスタンフォード大学で語った3つの考え方は、キャリアの実学そのもの。

 


20回の研修の受け止めはとても良かった。Connecting the Dots.が刺さったとコメントに書いてくれた人も多かった。ジョブクラフティングという考え方は、気をつけてインストールしないと、組織側の都合のよい操作主義思想だと捉えられる。

 


悩みなんて一見なさそうな日向を歩いている人たちにも、苦悩の時期がありそこから抜け出すためにとった行動だというだけ。そのことは、教えるのではなく感じ取ってくれればいい。

 

でも僕が思うのは、いい大学に入り、評価の高い会社に入ることが幸せの方程式ではないのだということ。必要なのは相対性の世界に流されない自分の軸と哲学。このことを理解している人はとても少ないということなんだよね。

 

僕は大学以降は、月曜日が憂鬱だなんて思ったことがないもの。