器用な人は、一通りなんでもできてしまう。結果として選択する自由も多い。そして自らの意志が特段強くなかった場合は、選択肢の中から、相対的評価を基準に物事を選択していく。それが一番確実だったりするからだ。一方で、不器用な人間は得てして選択肢が少ない。でも、それは時に幸いだったりすることもある。
最初は文学部に行こうと思っていた...
まともな大学に1年で行くことを考えたら、工学部は断念すべきと決断した予備校入学前の3月。でも、文系に転換したからと言って、目算があるわけではない。英語の偏差値は40台だったし、国語や社会は国立理系から私立理系に狭めた際に勉強を放棄していた。
一つだけ好材料があるとするなら。それは国立理系の時に選択していた国語の成績だった。こいつだけは、いつも偏差値70前後の成績だった。学校の成績は、真ん中だったにも関わらず・・。国語の先生は首をひねっていた。
文学部はいけるかもしれない・・それは、国語の成績をもってしての実に単純な思いだった。エンジニアになりたいから工学部・・というような動機ではなく。
『文学部に行ってどうするんだ?』親父からは当然の反応。反駁を試みようにも、切り返せない。石坂洋次郎を生み出した、三田文学を擁する慶応にでも行けたらな・・という程度。それも、よくよく調べると困難であることが直ぐにわかった。それは、社会だった。文学部においては、日本史もしくは世界史が必須。国立理系だった僕は、高校に入ってから選択していたのは地理だった。
地理を軸に学部を探していくと、法学部、文学部は選択から外れる。残るは、経済、商学(経営)。抽象的なものを扱うのは好きじゃない。具体的な企業経営を扱う商学が自分には向いている。そもそも、他に選択肢があっても商学・経営が自分には合っているんじゃないだろうか・・
行きたかった大学に入り、初めて受けた経営学の授業。とにかく面白かった。考えは間違えていなかったと確信した。1年時に受けた必須科目、経営学総論、一般経営史は、ゼミの選択から後々のキャリアにまで繋がっていくことになる。
もし、僕がそこそこ器用で、理系に行けていたらどういう事になったのだろう。もしくは、法学部なんかに行っていたら・・経営コンサルティングという仕事に就くことは、そもそも無かったかもしれない。不器用で選択肢がないというのは、自分の本質に早いうちに向き合えるという点では、ある意味で幸運なことなのかもしれない。