新開作品で一貫して取り上げられているテーマは、現代社会に生きる中で個々が抱える「孤独感」と「すれ違い」。多くの人は、心の中に孤独を抱え、自分にとっての”必然”に、巡り合いたいとする渇望感を持っている。その中で彼の作品の主人公は、状況を打ち破るヒントを自身の中、過去に求めていこうとする。
それはまるで、「自分をめぐる冒険」であり、監督の愛読書でもある村上春樹さんの世界に通じるところがある。運命の人に巡り合いたいとするならば、隠されていた自分自身の過去や深層の”井戸”に降りていかなくてはいけない。
君の名は。は、神話や神道という日本文化に大きく根差した部分があるものの、日本以外の国でも若者を中心に大きな支持を得ている。きっと、孤独の癒しを感じている人が多いこともあるのだろう。
とはいえ、運命の人に出会って孤独が癒されるということは、現実には簡単に叶うものではない。むしろ、運命の人だと思って出会ったものの、その人のお陰で却って孤独が深まったというケースが多いのもまた真実だ。
サンテグジュペリは、「星の王子様」の中で、王子様が育てていた一本のバラを例えとして、運命の人というのは、出会うものではなく、長い年月をかけて自分で育てていくものなのだ。結果として、それが運命の人になるのだ・・・と言っている。現実の世界に生きる上での教訓は、実はこちらの方にあるのかもしれない。