傷つけ合う互いの関係に疲れピリオドを打った一人の女性。わだかまりの残る気持ちを抱えながら、青空を追いかけ海に向かって自転車のペダルを漕いでいきます。そこで見つけたのは、沖に遊ぶ鳥のように自由になった自分。
恋人といることがあるべき姿。お一人様というのは肩身が狭いという風潮が流れていた80年代。旅行、クリスマスシーズン・・バブル期の商業政策の中で、恋人同士で贅沢な時間に浸るすばらしさが殊更ながら強調されていた時代。
「Bewith」に歌われていた世界は、デニム、白シャツ、ソバージュにコンバースという出で立ちで、自分の意思や価値観をしっかりともったデビュー当時の今井美樹さんの姿にそのままオーバーラップします。
今において独りでいることは、何ら不自然なことではなくむしろ一つのスタイルとして認知され定着していますが、ともするとステレオタイプの窮屈な価値観に一石を投じたのが彼女のアルバムだったのではないかと思います。
果てしなき青さを海まで追いかけたくて
砂の残る素足で錆びたペダル漕いでゆく
光のモスリンが柔らかな風を編んで
流れ出す黒髪も
息を切らし走る輝いた翼になる
作詞家の岩本祐穂さんは多くの歌詞を彼女に提供していますが、9月半島のこの表現はあまりに素晴らしく、どうやったらこういう文章表現を思いつくのでしょうね。