猛烈な風に襲われた夜半過ぎの東京。台風の残した災禍の爪痕は大きく、我が家が面する緑道に植樹された木が倒れてしまった。
重機で姿勢を直し、残して欲しいという思いは通らず、伐採撤去の憂き目に。
毎日窓から見てきた樹木が撤去されてしまうのは、想像以上の喪失感。此処に来て15年。毎朝、窓を開けると大きく枝を伸ばした木々の様子を見てきたから。
そしてこの木々は、自然の調光機能も果たしていた。夏は、強い陽射しが居間に入るのを防ぎ、冬は葉が落ちて日光を届ける。5月には青々とした葉が芽吹く。木の変化をソファから見上げているだけで、季節を感じられた。台風前には、メジロが雨宿りに複数飛来していたばかりなのに。
家に戻るとすっかり木は無くなり、居間には形見の切り株。ここまで育つには、20年くらいはかかるそうだ。
新しい木を植えてもらえるのは、来年の秋になりそうで。しばらくは、窓からの景色をみる度に一抹の寂しさを味わうことになる。とはいえ、形あるものは何時かは無くなる。この程度で感傷に浸れるのは、幸いなのだけどね。