南仏、コートダジュールにあるニース。僕ら世代にとってはなじみ深い場所。
昭和50年代。毎週日曜昼下がりにテレビ朝日で放送されていたパネルクイズアタック25。当初はエールフランスが単独スポンサー。
当時、海外旅行は高嶺の花。優勝者には遙かなるフランスへの旅行がエールフランスからプレゼントされた。『パリ、そしてニースがあなたを待っています』児玉清さんの台詞を何度耳にしただろう。その度に思ったものだ。明るい陽光に照らし出されるビーチをビキニ姿で歩く女性たち。ニースとは一体どういう場所なのだろう・・
コロナ明け。久しぶりの5人家族の海外旅行でここを選んだ。行ったことのない場所を、という条件で妻が選んだのだが、理由はよく分からない。今や全員が社会人となり、それぞれ現地集合。僕と妻は、ドーハ、リスボン経由でのニース入り。息子二人はミュンヘン経由。娘は、フランクフルト経由。
小さい頃から旅慣れしている我が家らしいが、それぞれに都合の付くかつ、リーズナブルに押さえられる航空券を優先したら、バラバラとなった。激しい円安に振れた中で久しぶりに訪れた欧州。オーバーツーリズムで人がごった返す東京や大阪、京都と異なり、ニースにはアジア人がほぼいない。中国人は全くいないし、韓国人もいない。もちろん、日本人の姿は皆無。江の電 鎌倉高校前やビーチに中国人があふれかえる様相とは全く違う。
ビーチ沿いのペイブメントには、ランニングをする人たち。脇に沿った自転車専用道をロードバイクを走らせる人。コートダジュールはヨーロッパの高級リゾート地であり、スマートな人たちが多いのだろう。明るくて健康的な情景。
旧い修道所を改装したホテルはニース東端の海辺。快晴の朝、ここからニースの海岸沿いをランニングした。鎌倉、湘南の海沿いのランニングコースも素晴らしいけど、ここもとても素晴らしかった。空港でプジョー305をレンタル。ニースからは、映画祭で有名なカンヌ、モナコに1時間ばかりで行くことができる。
海岸沿いまで断崖がせり出すコートダジュールは、海沿いの道からは絶景の地中海を拝むことができる。途中、何度か脇に車を止め景色を眺めた。欧米で様々な道を運転したけど、ニースからモナコに抜ける海岸沿いの道はシニックビューのベストといってもいい。その理由は、日本のようにいたずらな開発の手が入っておらず、田舎の素朴な光景と雄大な自然が溶け込んだ光景がそのまま残されているから。かといってこの地が貧しいかというとそんなことはなく、イタリアのセリエAチームの練習場があったりするし、広大な邸宅を随所にみることができる。伊豆などもうまくやればそういう光景が残せるはずなのだが・・
異種独特なのは、モナコ公国。ここだけは、現代建築の高層ビルがたちならび、華やかな高級ブランドショップ、ブティックが軒を連ねている。ディズニーランドやドーハの高級ショッピングモールが虚構なのだとすると、ここは本物のおとぎの国。ヨットハーバーには高級クルーザー、街にはゴミが一切落ちていない。F1の中継で部分的に切り取って見ていたモナコだが、周囲と大きなコントラストをもった特殊さが伝わってくる。雰囲気としては、隙が無く丸の内、銀座がはめ込まれ、アップデートをし続けてる神戸三宮みたいな場所。コートダジュール自体は、葉山、逗子、伊豆に通じるところがあるのだけれど、歴史や富の堆積というものを葉山、逗子、伊豆には感じることができない。
もはや日本はかつての南北問題を抱えた70年代のイタリア、英国病と称されたかつてのイギリスのように なってしまったのだ。遙かなるニースに憧れていた当時の日本は実は活気があったのだということを肌で感じたのでした。












