20代の時、マネージャーになることを目標に一心不乱に仕事をしたときがあった。コンサルタントとして一角の人間にはなれることを証明したかった。所属していた金融領域のITコンサルタントとして先を極めるイメージはまるで持てていなかった。だから、パスポートだと考えて昇格後にその先へ進むのをやめてしまった。
その後、戦略、組織人事とキャリアをピボットした。上を目指すことは目的から消えた。戦略ではシニアマネージャーにまでなれたけど、組織人事領域にピボットしたときに、ランクを下げて転職した。リクルートに行ったときには、会社の看板も肩書きも真っ白にしフリーランサーとして働いた。それが意義があったし、後悔はみじんもない。
自分が立ち上げた事業を、フリーランサーという弱い立場であるが故に追われ、僕は再び会社員に戻った。そこでは、久しぶりに上を目指した。理由は学費と病気を持つ子供のためにお金が必要だったから。けどそれはかなわなかった。確実な成果を残したのに想像もしないような妨害工作に遭い、上を目指すどころではなく、一介の専門職に追いやられた。
楽に生きていくなら、専門職も悪くはない。誰にも負けないと思える専門性は築いていたから。でも、一度三途の川を渡りかけた人間において、安定なんてくそ食らえ。僕はその組織を未練なく後にした。
新天地はベンチャー企業で組織人事コンサルティング事業の立ち上げ。顧客もサービスも何もない。荒地を全力で開墾する日々。大変だったけど自分のような人間にしかできやしまい…やれるものならやってみろと前に進んだ。リクルートの時の事業開発の経験が存分に生きた。
いつしか、顧客とサービスは拡がりメンバーは4人から25人となり、売り上げは10倍となった。
業績なんて時の運もある。ただ自分がやってみたかった組織人事の総合診療医としてのコンセプトに共感してくれるメンバーが、手探りしながら新たなサービスをそれぞれ形にしてくれた。
出世には20代以降にはあまり縁がなく、空白期間を入れて20年近くマネージャーを務めた。トップガンのトム・クルーズも役柄ではあるけどずっとキャプテンのポジション。それはそれでよし。
かつて夏の逃げ水のように近づくと逃げていったタイトルは、業績を上げるとすんなり与えてもらえた。それが真の実力主義を掲げるベンチャーの良いところ。紆余曲折、七転び八起きのキャリア。果たして、55歳ともなってパートナーという立場となった。新卒時代の同期の中でもコンサルティングをフロントで続けている人間ももはや珍しい。これも不器用で寄り道ばかりの自分らしいキャリアではないか…と思っている。