Homare's Diary

組織人事コンサルタントの徒然日記です

年齢差別の人事制度

リクルートでミドル・シニアのキャリア自律支援事業を立ち上げに参画したとき、僕は40歳でした。ファーストクライアントは定年延長・廃止を検討していたA社、セカンドクライアントはバブル期入社世代を大量に抱え業績低迷に喘ぐB社でした。

 


B社においては、ミッショングレード導入した際に役職定年を撤廃しました。2000年中盤のことです。一方で年功的制度運用でミッショングレードを運営したために、大した仕事でもないのに課長、係長クラスに大量の社員が偏在していました。

 


本来は、評価で序列をしっかりつけた上で、降格、昇格を出現させるのが王道ですが、その会社においては役職定年を復活させる選択を取りました。厳格な制度運用をできる力が自分たちにはないし、時間もないというのがその理由でした。

 


結果として、課長クラス53歳、部長クラス55歳という役職定年が導入。分岐点となるキャリアを手前で考えさせよう…早期退職を促進させたいという趣旨で48歳でキャリア研修が行われることになりました。

 


B社においては、その後業績が復調しキャリア研修の目的や内容が変わりましたが、役職定年は依然としてそのままです。

 


当時の僕は53歳という年齢を彼岸のことのように見ていたわけですが、いざ自分がその年齢に差し掛かると、いかに非合理で理不尽な仕組みなのかを感じざるを得ません。

 


いくつか理由がありますが、

 


①役職定年は新卒一括採用・年功的昇給をアジャストする仕組みであり、中途採用・ジョブ型雇用と相容れない仕組みであること

②人の能力格差は年齢と共に拡大するものであり、一律的に処遇を変更することは、優秀者の切り捨てになること

③単純に年齢差別であること(米国などでは法的に禁止)

 


というところでしょうか。

 


少なくとも役職定年が入っている会社においては、中途採用で明らかに不利になるし、優秀な中高年層の力を引き出すことの弊害になるということを明確に自覚した方が良いと思うのです。

 


一方で、役職定年は運用が極めて楽であり、人事部のガバナンス力や変革力が低い会社では、選択せざるを得ない。

 


少なくとも役職定年を導入している会社の人事部の方は、このおかしな制度をなぜ自分たちが選択しているのか、せざるを得ないかを明確に言語化できるようにした方がいいと思うのです。もっといえば定年制だって同じことです。

 


毎年毎年、厳格な評価が行われDead or Aliveが決まる仕組みならば、役職定年、定年制もキャリア研修も必要はない…と僕は考えています。