Homare's Diary

組織人事コンサルタントの徒然日記です

HR領域のデータ活用課題

紙やエクセルで処理していた業務をクラウドシステムに置き換えていくことは『効率化』という観点で大事なことだと思います。一方で、クラウドシステムを導入して業務が効率化しても、デジタルデータを活用した業務の『高度化』が出来るようになるかというとそうではなかったりします。


HR領域では『効率化』としてのクラウドシステムは百花繚乱。それなりに導入も進んでいるのですが、データを活用した『高度化』が行えている企業はほとんど無かったりします。その証拠に、『高度化』を謳い文句としているタレントマネジメントシステムを導入した企業が、退職率予測や適所配置、エンゲージメント向上に向けたPDCAを行えているかというと、皆無だったりします。(導入すればそういうことが出来るという営業にコロッとだまされている)


その理由は、採用、評価、育成といった個別業務最適化の視点でシステムが導入される一方で、導入時点の構想において蓄積データから付加価値を創造するという思想が全くないからです。


その発想が一ミリでもあれば、従属員属性で『データの名寄せ』をすること、テキストデータではなく『コード化』をするという発想が自ずからでてくるもの。マーケティングにおいては『名寄せ』と『コード化』なんてイロハのイ。だから、高度な分析を行いそこから新たな示唆や仮説を検証することが出来る。HRにおいてはデータはしょせん業務処理の副産物として生成されるものであり、貯めていけば何か出来るだろうという程度。


以前の会社で、人事データの分析を専門に行うセクションが創設されました。目の付け所は悪くないと思ったのですが、サービスの実用化の目処が立たず集められた人材も早期離職し雲散霧消。結果として3年で解散を余儀なくされました。原因は、貯まったデータをデータサイエンティストによって分析させれば、面白いものがでるはずだ・・という考えに立脚しています。


データサイエンスを行うには、前段階のステップとして『データエンジニアリング』と『データマネジメント』が成されていなければ価値を産み出すことが出来ない。いくら統計解析の専門家の腕によったとしても、名寄せもコード化もされていないデータをあまたおかれても、まともなアウトプットが出ないことは明々白々。


マーケティングの世界で活躍してきたデータサイエンティストは、前処理が行われた環境で分析をしているだけの『専門バカ』ですから、なぜまともなアウトプットを出せないのかの理由も明確に述べられない。果たして人事領域ではまともな仕事が出来ない・・という不満を挙げるだけ。統計学という高性能エンジンを持つスポーツカーは、綺麗に舗装された路面がなければ性能を発揮することが出来ないのです。


従業員を『個として扱うマネジメント』に昇華するためには、『名寄せ』『コード化』『一元化』が必須。ただし、このことを理解している組織・人事領域のスペシャリストがどれだけいるのでしょうね?同じ現象は行政サービスでも全く同じです。データリテラシーが低いのとセクショナリズムの壁に阻まれているのです。


政府がデジタル庁を遅まきながら設置してデジタルトランスフォーメーションを進めようとしているのと同じく、人事パーソンのデータリテラシーを向上させ機能縦割りの壁を打破して名寄せした一元データから価値創造をしていくことができないと、HRが第四次産業革命(industry4.0)のボトルネックになる状況は避けられないと考えています。