日本の集団的意思決定は、コンセンサス重視に偏っている。コンセンサスというのは上位の権限者の意見・思いに寄せていくことであり、政治とは事前に不協和音にあたるものを排し、権限者の腹を探って落としどころを見つけ出していくこと。
この意思決定方式の問題は、集団浅慮(グループシンク)に陥ることであり、意思決定に参加する人間においては他者依存、思考停止状態に陥ることにある。
この状態は音楽でいえば、ソリストの独演場かAKB48のようなユニゾン演奏であること。ソリストが万能であればグループシンクに陥ることはないが、思考停止、依存状態のメンバーは後継者とはなり得ない。喜び組としての政治力が磨かれるだけである。
集団としての力が出る状態とは、音楽でいえばアンサンブルの状態になっていること。アンサンブルは異なる音色、音程の音が和音を形成している状態である。これにおいては、それぞれの特性の異なる楽器がしっかりと音を出していかないと成立しない。
そして、和音を形成する上で大事になるのはコンポーザーである。コンポーザーの役割は、音を止めることではない。音を聞き分け、引き出していくことにある。
シリコンバレーの経営を導いた名コーチと謳われるビル・キャンベルが行ったことは、まさにアンサンブルを創り出していくための、コンポーザーだった。
ちなみに、オーケストラにおいて演奏をリードするのはいつでも特定の楽器ではない。だから、曲調や局面によってリード奏者は変わるべきである。その判断もコンポーザーは司る。
ジャズともなれば、コンポーザーは要らなくていいことになるのだが、これはそれぞれ自身の音を確立し、かつ相手の音を瞬時に聞き分けて即興演奏ができるプロフェッショナル奏者だからこそ成立するものであり、誰しもができるものではない。
むしろ、通常の組織においてはアンサンブルを創り出すことがリーダーの使命であり、政治力やコンセンサスの重要性を説くリーダーというのは前近代的でイノベーションにおいては邪魔な存在でしかないのだと思うのである。それにしても、日本の組織にはコンセンサス力だけで生きている政治屋が多くて嫌になる。これでは、GAFAになんて敵うはずがないね。