Homare's Diary

組織人事コンサルタントの徒然日記です

社長よりプロ職人

コクヨのもとでの買収騒動に揺れたぺんてる。議決権を持つ5割の買収は失敗し、同業のプラスの傘下に入ることになった。この騒動は、ぺんてる創業家三代目の社長がクーデターによって会社から追い出され、復権を図ろうとするものの失敗。自らの持つ株をファンドに売却したことが発端。そのファンドにコクヨが出資することで実効支配を行おうとしたことにある。


要は、コクヨを通じて三代目社長が復権するシナリオに対してぺんてるがNoを突き付けた格好だ。コクヨも老舗のメーカーであり社風も穏やかなもの。それゆえに、元社長の影がない限りは、ぺんてるが激しい拒絶反応を示すことなどないだろう。


このM&Aに合わせてプラスの傘下には、セーラー万年筆も入ることになった。セーラーも日本の三大万年筆メーカーの一角を担う老舗であるものの近年業績は低迷。社長は財務省からノーパンしゃぶしゃぶのスキャンダルで辞任し、天下りをした人物。万年筆のクオリティは素晴らしいのだが、経営者としての資質、センスが全くない人物が経営を担うとどうなるか・・を絵にかいたような状況だった。


セーラー万年筆はプラスの傘下に入り、財務基盤はしっかりしたものになった。ぺんてるとの事業提携もするという。旧態依然とした老舗メーカーをしっかり残していくためにも、プラスの動きに期待をしたいところ。


だがこういったお家騒動が起きると、真っ先に起きるのは優れた人材の流出。


セーラーが誇るペン先職人の長原幸夫さんもセーラー万年筆を去ってしまった。お父様もセーラーの看板職人であり、そのスピリットと技術を受け継いだ長原さん。高級価格帯のペン先はほとんど彼が手掛けていた。辞めた理由は、『定年退職に伴う独立』なのだが、お父様が定年を過ぎても嘱託でセーラーに残り、看板職人として活躍したことを見れば、セーラーは長原さんという至宝を失ってしまったことになる。


長原さんは独立し、メーカーに縛られないペン先調整のプロとしての活躍を選んだ。それはそれでよいことなのだと思う。とはいえ、歴史ある名門企業の看板といっても良い方であり、嘱託社員として多少高く処遇しても全く惜しくはない人材だったと思う。無能な社長なんかよりも厚遇で構わないくらい。


こういう職人こそが、定年という枠に縛られず会社で働き続けられる仕組みが理想なんだろう。そして、そういうプロに選ばれる会社でないとね。


長原さんに左利き用に調整してもらったセーラー万年筆は日々愛用しているわけなのですが、今度はパイロット万年筆の調整をお願いしてみようかしら・・