手をかける、面倒を見る、愛情を与えるとその分だけ愛着がわく
この法則は人だけではなくモノ、サービス、仕事すべてのことに当てはまる。手をかけるというのは、対象を理解しようと努めること。気持ちを注ぎ、理解が深まれば深まるほど愛着が湧いてくる。もし、好きになれない対象があるのだとすれば、それは理解をするための労力を割いていない、理解をしたとレッテルを貼って済ませている可能性がある。
この法則を商売においては逆手にとる戦略がある。愛着を沸かせないように、使い手に極力手を掛けさせないようにすること。そうすれば買い替え需要は喚起される。
この戦略を早くから取り入れたのが自動車。車検を含めたメンテナンスはユーザーではなく、ディーラーをはじめとした人任せにするような仕組みが作り上げられている。自分で修理をしたり、改造ができるユーザーは一部の知識を持つ人間だけ。それが出来る人たちは、安易に車は買い換えない。
この仕組みに目を付けたのがAppleだ。AppleはMacintosh時代からユーザーに改造をさせたり拡張をさせないように筐体にはあえて特殊なネジを採用している。中身を開けさせたくないのだ。何か不具合があっても自分で修理することは困難で、ライセンスを受けた専門店に持っていかなくてはならない。
iPhoneにおいてもバッテリー交換をはじめとして、ユーザーは何一つハード的には手を触れることが出来ない。特に消耗品であるバッテリーが交換できないとなると、せいぜい使い続けられるのは3年が限度。ユーザーも愛着が湧いていないから、新商品が出るとまんまと乗せられて買う破目になる。実に巧妙な戦略だと思う。IBMはこの戦略を取らなかったがゆえに、ThinkpadをLenovoに売却することになってしまった。Thinkpadの思想は完全にオープン。ドライバーがあれば中身を自分で開けてハードディスクから画面まで交換できるようになっている。実にユーザー視点だと思う。
iPhone7に買い替えてから3.5年。途中でAppleの不手際により新品交換にはなったけど、自分でバッテリーと画面を交換。今のところ不具合もなく使い続けている。今回、iPhone SEが登場した。想像以上に魅力的なスペックなのだが、やっぱり今の機種を使い続けたいという気持ちに気づいてしまう。そう、自分で手をかけたこの機種は、この世でオンリーワンのものだから。
好きなものに囲まれて生きるというのは、人生を豊かにさせることの一つ。そのためには、自分で修理したり長く使い続けることが出来るモノを選ぶことが条件になってくるのだろう。