ベストを尽くしても、その行為がいつも賞賛されるわけではありません。むしろ、その真逆の評価を受けることだってあります。恐ろしいことですが、それが世の中の現実だったりします。
1989年。F1ワールドチャンピオン争いがかかっていた鈴鹿グランプリ。ポイントリーダーのアラン・プロストを追うアイルトン・セナは優勝が逆転への絶対条件。予選でアイルトン・セナは二位のプロストに大差をつけ、ポールポジションを獲得。逆転チャンピオンに向け一縷の望みを繋ぎました。
本戦でスタートが遅れたセナは、二位に後退。一時期は放されますが、怒濤の猛追。アクシデントは残り10周で発生します。シケインでインを突いたセナをプロストが強引にブロック。両車ともに破損リタイア。これでプロストはチャンピオン獲得決定…
諦めきれなかったセナは、マーシャルの手を借りて押しがけスタート。フロントウィングを破損しながらも鬼神の走りで一位チェッカー。逆転優勝か…と思われました。ですが、非情な裁定が下りセナは失格。さらには、『危険なドライバー』というレッテルが貼られることになります。
このため、翌年のF1を走るためのスーパーライセンスも発給されず、失意と傷心のオフを送ることになるのです。
引退か転向か。ファンを魅了する渾身の走りが、危険なドライバーで走る資格なし。どうしてこんなに世の中は非常なのでしょう。
最終的にセナにスーパーライセンスは発給され、セナは1990年のワールドチャンピオンを獲得します。胸のすく、素敵なストーリー。ですが、世の中にはベストを尽くしても最悪の評価を受けるということは、あるものなのだ…と思うのです。