遠くにいる本当に好きな人より、近くにいる自分を好きでいてくれる人。
本当に好きな人との距離を縮めるのに必要な事は、時に自分の心に身を任せる強引さ。ただ、本当に好きだと相手を必要以上に崇高な存在と扱ってしまうことで、強引さは相手を汚す邪なものであると捉え、自分を縛り付けてしまい却って距離を縮められない。
邪であると捉えてしまうというのは、根源的に自分に自信がないことから来ている。邪であると位置づけ、行動しないことを正当化し、小さなプライドを守っているだけなのだろう。
深い孤独感は、自分を心から理解してくれる人がいないことより、自分が心を通わせたい好きな人が出来たこと、そのひととの距離によってもたらされる。
自分がもう少し強くなり、小さなプライドを脱ぎ捨て、相手を引き受けていく懐があれば…
人を好きになることは、無力感と寂寥感を抱えた少年が、大人になっていく上で通らなくてはいけない洗礼…
『 君の名は。』のパラレルワールド的な作品。エンドロールに癒やしの要素はなく、否定的な意見も多い。一方で、青春期の等身大の葛藤がリアルに描かれ、心の中にシンとした塊を遺していく作品。
本当の意味での癒やしは、埋めきれない心の溝を形にして見せてくれるこちらの作品だと思う。