Homare's Diary

組織人事コンサルタントの徒然日記です

自律と有限性

人は、現状が永続するという認識の元では、行動をなかなか変えようとしない。有限性を認識した時、行動を変えていく。

旅の時間が、日常より充実したものに感じられるのは、未知の空間に自分を置くことだけではなく、旅の終わりを意識してアンテナが高くなり、意欲的に行動することも大きい。有限性の中では、時間が輝く。成長のスピードも格段に上がる。

ではキャリア自律をさせていく上で、どのような仕掛けが必要か?

本質的には、キャリア研修でも、会社や上司からのメッセージでもない。役職定年の導入や再雇用制度を変更することで、断絶のポイントを設けるのはある程度有効。でも、究極の所は、個々人が「無常観」を持つこと。無常観を持っていれば、自分を基軸にした行動を、いつまでも先延ばしにはしないだろうから。

ティージョブズは、こう言っている。

・自分が間もなく死ぬことを覚えておくことは、人生の重要な決断を助けてくれる、最も重要な道具である
・ほとんどすべてのこと、つまり、他の人からの期待や、あらゆる種類のプライド、恥や失敗に対するいろいろな恐れ、これらのことは死を前にしては消え、真に重要なことだけが残る
・自分の心のままに行動しない理由はない。たまらなく好きなことを見つけなさい

大企業のサラリーマンで、自分の心に従い、たまらなく好きなことを見つけ、永続的にその状態が続く人なんて、一体どれだけいるのだろう。そして、事業会社に勤めたら、ある程度のポジションに就かなければ、視界も狭く権限も与えられない。自分らしさはおろか、仕事はさほど面白くならない。

我慢を重ね、せっかく就いた役職でさえ、どこかの年齢で放棄しなくてはいけない。情熱を傾けられる仕事であっても、突如の辞令で引き剥がされる。そして、定年においては否が応でも会社という場から放逐される。

40代後半、50代後半の賃金の高い、ミドルシニア社員は大企業にとって、その大半は”お荷物”。組織は、個人が思うほどに自分のことを気にはかけていないもの。

会社に投入している時間は、人生においても大部分であり、気力も体力も充実している貴重な時間だったりする。その貴重な時間を投入して、得られるものは何か? 人生も残り少なく、自分が持つリソースも、外部におけるチャンスも少なくなった中で、先送りにしてきた事は、果たして実現できるのか?

有限性を認識し、自分に向き合っていたら出てくる答えは、今の場所で我慢し続けるというものだけではないだろう。

『家族のため』確かにある。でも、どうせだめだと行動する前から諦めているのを、体よく繕っているだけなのでは? それでは、自分に与えられた”タラント(才能)”を自分の中に埋めたまま終えることになる。それは、相当に”もったいない”生き方。でも、そういうことは死に損なってでもみないと、分からないのかもしれない。