人には多かれ少なかれ多面性というものがある。人に見せているもの、見せようとしているものはその人のごく一断面にしか過ぎない。
いつも笑顔を絶やさず、包容力をもった優しさに溢れている人でも、その裏側で埋めがたい孤独や粗野で冷酷な部分を抱え持っていたりする。
だから僕が好きではないのは、人の一断面だけを見てレッテル張りし、分かったような気になる人。確かに分かりたいとか整理したいという欲求は人間誰もがあるけど、どこまでいってもそれはエゴだから。
アーティストのアルバムで好きなのは、そうした多様な一面が表現されているもの。ものすごくリズミカルでポジティブな曲のカップリングで、モノトーンで内省的な曲とか。コントラストが強い曲が組み込まれており、アーティストの隠れた一面が照らし出されていると、引き込まれる。
最近、はまっているのが早見沙織さんの『Junction』というアルバム。声優としてのキャリアの長い彼女。僕も夜中に放映している『ジョジョの奇妙な冒険』でアルバムCMを見るまでは全く知らなかったのだけど、声フェチの人間としては、素敵な声に耳が止まってしまう。
実際にアルバムを聴いてみると、多面的かつコントラストのある詩と曲が巧く散りばめられている。すっかり好きになってしまった。
中でも、彼女の書いた「メトロナイト」という曲が秀逸だと思うのですが、慈愛に満ちたような雰囲気の人が、刹那で物事を突き放した感じで歌っているのがなぜか心地いい。恐らく、様々なキャラクターかつ多感で移ろいやすい少女という役割を担えるからこその表現力なのかもしれませんね。