Homare's Diary

組織人事コンサルタントの徒然日記です

奉仕できる幸せ

心理学者のアドラーは、幸福になるための観点として「自己受容」「他者信頼」「他者貢献」の3つを挙げています。人の不幸は、突き詰めていくと人間関係によってもたらされる・・という彼の主張と併せてこの3つの条件を眺めると、実に味わい深くなるほど・・と思うわけです。


究極の孤独というのは、自分がこの世で誰からも必要とされていないこと。周りから慕われている人、頼られている人・・これは間違いなく心が満たれます。家族の仲が良い、趣味で多く仲間がいる、仕事でも頼りにしてくれる同僚やクライアントがいる。これはベストな状態です。


すると、会社で定年を迎えた人や役職定年を迎えた人は、収入が下がるからモチベーションが下がるのではなく、他者貢献する機会を奪われてしまう、もしくは見失ってしまうからモチベーションが下がってしまうのだ・・と考える方がいいのです。


であれば、他者貢献をする機会を増やすための工夫を凝らしていく方が、収入を上げることよりずっと良いはずです。でも、人事の人はごくごく簡単なそんなことに気が付きません。きっと、人事の人たち自体が幸福になるための法則を分かっていないし、人事のミッションとして「社員を幸福にする」ということを普段から意識していないからでしょう。そもそも、人事のお仕事をしている人たちのどれだけの人が「幸せ」だと感じているのでしょうね。


そして、「他者貢献」という言葉の意味もよく考えてみる必要があるのです。


「貢献」は、報酬と労力の”トレードという意味合い”で使っていやしないでしょうか。他者貢献という以上は、見返りがあろうがなかろうが相手が喜んでくれることが条件です。外形的なトレードが成立してから行う貢献ではないという点です。


そのためには、心理的な報酬の源泉でもあり、提供する価値を形づくるための「自己理解」と「受容」が欠かせないものになります。これが出来ていないと「貢献」はしょせん「トレード」の域を脱することはない。そうなると、他者貢献をするにあたっては、自分自身の真実の姿を理解し、その姿を受け容れていくことから行っていかないといけない。ここは、リンダグラットンのマルチステージキャリアを形成する上での条件である「自分に対する知識」とも符合します。


そして、「トレード」という観点ではない「他者貢献」をいかに増やしていくのか..ということになるのでしょうね。