この国では2つの顔が必要だ。
「個性を大切に」と学校は教える。
「空気を読め」と会社は言う。
けれど、私は私。自分だけの風を吹かせたい。
私は準備ができている。世の中はどうだ。
POLAキャリアフォーラムのキャッチコピー。未だにこういうコピーが山手線をジャックして流れる。女性をターゲットにあてたように思えるが、男性でも十分刺さるのではないだろうか。
持ち味を発揮して働いて行くためには、空気なんか読む必要がないところがいい。むしろ、空気を読む事なんて苦手。そういう会社では評価もされないし、自身もつまらないだろう。さて、どうするか?準備ができているかなんて、問うたところで勝ち目のないドンキホーテ。場の選択こそが大事なのだ。
保守的な就職をする僕の大学では、外資系はおろかコンサルティングファームに行こうとしていた学生などいなかった。もちろん、先輩もいない。果たして志望のところに内定を得たのち、選択の正しさを少しでも確かめたいと思い書店を巡った。今と違って情報は少なかった。
目に留まったのが、「ニューヨークからの採用通知」という本だった。雑誌anan連載の手記がベース。主人公は、企業に勤める一般職OL。単調で先のないキャリアを変えるべく一念発起。米国会計士の資格を取り、大手会計事務所のピートマーウィック(現KPMG)に就職の口を得る。内定を得て働き始めるまでの物語だった。
画一的に人を扱う世界から離れ、しがらみのない世界にキャリアを求める。同じ国際会計事務所でもあり、価値観が被るものもある…
果たして、僕は空気を読む必要のない会社に入り個性を活かしたキャリアを積むことができた。うちに、少しは空気を読めるようにもなった。
『そんな感じのままでも、働いていけるんですね…』
数年前に大学生の子に言われた。ちょっぴり嬉しかった。自分を曲げた変に達観した大人にはならないで欲しい。こういうバランスの悪い人でも何とかやっているのだから。
僕を暖かい目で見てくれた寛容な人達に感謝するとともに、冒頭のようなキャッチコピーがなくなる世の中になって欲しい。そうでなければ、働くことに夢を持つ子供がいなくなってしまうだろう。