Homare's Diary

組織人事コンサルタントの徒然日記です

KPIマネジメントの弊害

KPI(Key Performance Indicator)は、結果創出に向けたプロセスが適切に行なわれているかを管理する指標であり、誰もが共通に認識でき、評価を共通に行えるというメリットがある。


一方で、結果創出にむけたプロセスが明確でなかったり、結果を出すための手法(プロセス)に変化が生じている際には、手段の目的化となり弊害のほうが大きい。

 

かつて在職していたアウトプレースメント事業においては、受注(企業からの再就職支援委託)という結果を出す上で、重点顧客に対しての訪問回数であったり、部長クラス以上のキーマンリーチの回数がKPI化されていた。営業マンは、KPIをクリアすればインセンティブがもらえるので、設定された目標をクリアすべく、顧客を訪問し、上位者に会うべくアクションする。キーマンに会うためには、自社の役員や部長を同行させ相手の上位者を担ぎ出そうとする。会った上での話の中身は二の次にして。(僕が担っていた新規事業ではこのようなことは行っていない)


だが、自社の構造改革という有事のパートナーを選定する上で、何度も自分のところに来ているというだけの会社が決定打になるのだろうか?


オペレーション主体の事業会社において上級管理職に上り詰めている人間においては、社内政治には長けているが、現場感が低く、専門性も低かったりする人がままいる。この場合、両者を合わせたところで、実のある話はできない。場合によっては、上位者は看板倒れであることを喧伝するようなものになってしまう。


顧客が欲しているのは、自社の問題に対し専門的な知見や信頼性の高い実績やサービスを具備していることで、顔出しをして世間話をすることではない。結果として、KPIは達成しているのに業績はさっぱりという結果になる。


これは、業績結果がどのようなメカニズムによってもたらされているのか?という顧客視点のプロセス定義がなされていないことによる弊害である。単に会うだけではなく信頼を得るための、質の高い提案をすることが大事なのであれば、人材開発であったり、高い経験やスキルを持つ人材を抜擢、処遇するための人事制度にするのが本当の意味での解決策である。または、リストラされた社員を短期間で高報酬の企業に再就職することを可能とするための求人企業開拓であったり、カウンセラーや情報システムの質を改善するための投資であるかもしれない。

 

結局、事業を俯瞰してみた上で顧客の視点に立って結果がどのように導き出せるのかを常に見直し、KPIを設定しなければ本質的な打ち手ではない。そして、結果に繋がらないKPIをほったらかしにしているのは、マネジメントの無能さ、怠慢さといっても良い。


そもそも、これだけ変化の激しい世の中においてはKPIなど設定すること自体が難しい上に弊害も大きい。何より、KPIマネジメントは近視眼的、盲目的な社員を作り上げ変化対応力を弱めてしまうリスクがある。人材業界は、マッチングというゴールは普遍的でシンプルなため、KPIを設定しやすい。このため、KPIに染まりすぎ、人材マネジメントという顧客側の視点について、無関心な人が目立つように思う。