Homare's Diary

組織人事コンサルタントの徒然日記です

Win-Winのロジック

5年前くらいのことになるのだけど、僕の住んでいる家の緑道を隔てた向かいの広大な空き地に、大規模なコインパークを建設するという計画が湧き上がった。


もともとそこには、昭和30年ころに建設されたと思しきかなり老朽化した都営住宅群があった。空き室が目立つ中、最後まで居残り続けていた住民の立ち退きが終わり、都営住宅が壊された以降は、更地でバリケードで囲われたまま。公園拡張の噂もあったものの、まったくその気配はなかった。でも、緑道を隔てているとはいえ向かいは高台。ちょうど二階にいると向こう側と目線が重なる。公園に来た人と目を合わすのも悩ましいよね、なんて話をしていた矢先だった。


コインパークが出来ると、照明灯が夜も煌々と灯る。車の出入りも始終ある。林試の森に臨む場所だから、週末となると相当な利用があるだろう。家の向いでアイドリングなんてされたら、たまったものではない。

 

近所の人達も建設にはそろって大反対だった。私有地を私道として提供している昔からの住人は、「工事車両も含め道路には一切車を通さない・・」と息を巻いていた。私有地なので実際にそういうことをしても警察も何も言えないのだそうだ。

 


落札業者の担当者と住民との話し合いが何回か持たれた。もちろん、話し合いは平行線。向こうだって、落札をしたのだし、最大限の配慮はしつつ予定期日の開業に向け、粛々と作業を進めていくしかないのだ。さて、この状況をどう打開するか。

 


よく聞くと、こちらには有利な情報があった。家の前の緑道は、車両進入禁止の道。その理由は、公園の火災が生じるリスクを排除するためであり、車両が侵入するコインパークにすることは、管理元の東京都の措置とはいえ、矛盾しているということ。恐らく管轄が異なることでこうした決定がなされたのだろう。

 


この情報を材料に、次回の住民説明会では、相手業者に次のように説明することにした。

 


①この土地は、かつて東京都が行った火気を生じる可能性を持つ車両を侵入させないという方針に矛盾して駐車場として活用されようとしている。部局が異なるとはいえ、問題である

②駐車場建設については住民も反対しており、工事の進行妨害も辞さない覚悟でいる

③要は、この土地は駐車場利用という観点で見たら、瑕疵のある物件をあなた方は落札したのである

④よって、東京都に瑕疵がある物件ではないかと話し、落札はなかったものにしたらどうか?

⑤東京都としての瑕疵ということであれば、あなたも駐車場オープンについての責任を会社から問われることはない。我々もハッピー。そういうことにしませんか?


落札業者の担当者もこの説明に納得し、駐車場建設は見送られることになったのだった。ちょっとしたことだけど、住民の人達からは、僕はえらく感謝された。コンサルティングのノウハウというのは、身近な問題解決でも役に立つことがあるのだ。


新旧の住民が完全に融和できていなかった中で、天から降ってきた駐車場建設。それは、互いを一つにし相互理解をするいい機会になった。そして、今でも家の前には広大な空き地が広がっている。