普段着や仕事着を問わず、服選びの自主権が確立されていない。勝手に選んで着ていようものなら、粉々にならんばかりに怒られるのである。
『貴方はとにかくダサい。一緒に歩く身にもなってよ。とにかく、男は女の見立てに素直に従えばよいのよ。私のパパもそうなのよ…』と。
反駁もしないし、自分のセンスに自信があるわけでもないが。学習効果が無いというか、言われて素直に迎合する人間でも無く、果て無き争いは繰り広げられてきたのである。
基本的に、自由気ままにやりたい人間。だが、マゾでは無いので怒られ続けるのもしんどい。とはいえ、最近は古い洋服はメルカリやヤフオクで売り払い、コートやスーツをこっそり調達している。そして、気づかれないように穏やかにリリース。動物並みに勘は鋭い女性なので、こちらはドキドキもの。
『あれ?これしまっておいたんだっけ?』
と言われたときはドキッとしたが、『私がクローゼットを整理したから出てきたのね…。ちゃんとこれ着られて良かったじゃない』おお!やれやれ。
こういうときは、思い込みの強い性格が吉に出ている。(現実歪曲フィールドを地でいっている人なのである)
何はともあれ、妻目線が僕に備わってきたということは、一つ幸いなることなのかもしれない。