50代のキャリア研修のメニューにはよく加えられているマネープラン研修。自分の収支がいくらあるのか、将来にわたった収支予測のもとに仕事のあり方、生活のあり方を考えさせるものです。
今のように経済環境が激しく動いていて、さらには長寿を前提としたキャリア、生活設計などを見越すことが困難な状況においては、このマネー研修というのは両刃の剣だと思います。実際に、パーソル総研が行ったリサーチ結果でも、50代において行うマネープラン研修は、『躍進行動』を阻害するファクターになるという結果が出ています。
ダーウィンが言うように、生き残れるものは強いものではなくて、変化が出来るもの。一方で、お金の恐怖を目の当たりにさせてしまうと、人は萎縮して変化をしなくなってしまうからです。そうでなくても人は変化をすることを嫌うのに。
自分自身に置き換えても、マネー研修などを踏まえてキャリア計画なぞ立てたら、収入を落とし、かつ不安定なフリーランスのキャリアは躊躇したと思います。マネープランの観点で行ったら、安定した大手企業にそのまま居続けるのが確率論的には良いという結論になるからです。まあ、死に損なった人間においては、お金が中心の選択は意味が無いことがわかっているので、普通の人よりも引力が軽めかもしれませんが。
聖書の中には「恐れるな」という言葉が多く出てきます。
その言葉に隠されたメッセージはいろいろあるとは思うのですが。僕は、恐れると自分に隠されていた鉱脈を開く機会を逸してしまうからではないだろうかと考えています。
開発(かいほつ)。自分の中にある仏を見出す
Develop=velop(覆い)を取り去る
同じことを意味する二つの言葉が、奇しくも同じイメージを表わしているのはとても面白いのですが。結局恐れると真の自分を覆っていた覆いを取ることが出来ない。仏が姿を現さない。
覆いを取るという事は怖いし、痛みを伴うものなのかもしれないけど、それは過程での話。その先に待っているのは違う世界なのかもしれない。
マネープランの必要性で危機感、怖さを伝えることは大事だけど、いたずらに恐怖心をあおるのは人の可能性を開くことを阻害するとても罪深い行為。とはいえ、根拠のない安心感に浸ることも避けなくてはいけない。
それよりも、お金の観点だけで変化のない環境に身を置き続けていては、それぞれの人の中に隠された能力は覚醒しない。両者の視点に立って厳しさの中にも「恐れるな」というメッセージをどれだけ伝えられるか。それが、キャリア開発のキーワードではないかと思っています。