Homare's Diary

組織人事コンサルタントの徒然日記です

アクセルワード、ブレーキワード

プロジェクトリリースで取得できることになったバケーション。僕は、職場の先輩と二人でケアンズに行った。別にケアンズに行きたかったわけではないが、安くて真夏の場所というところに魅力を感じたのだ。ケアンズでは、男二人だったこともあり様々なアクティビティに興じたのだが(案の定、僕は向こうでもゲイに勘違いされた・・)、僕の心をとらえて離さなかったのはグレートバリアリーフで体験したスキューバダイビングだった。

 

映画「グランブルー」で海中の世界に興味をもっていたこともあり、僕は日本に戻ってスキューバダイビングのライセンスを取ることにした。スキューバライセンスには、難易度のシチュエーションに合わせ何段階かの認定がある。僕は、一通りのダイビングができる認定を取ることを目指し、スクールにせっせと通った。


認定に際しては、プールだけではなく最後はビーチで実技を行うことが必要。僕は、スクールが主催する沖縄のダイブツアーに参加することにした。


梅雨も明けた6月半ばの沖縄。実技は、6人のグループ分けでそれぞれにコーチがついて行われる。メンバーは僕と同じような20代の男女。友達同士という人はおらず、皆それぞれライセンス取得を目的に参加しているのだ。

昼は海、夜は沖縄料理を囲む会食。一緒の時間を過ごしていくと最初はぎこちなかった6人グループもすっかりお互いが打ち解けて仲が良くなる。最後はそれぞれ名刺を交換し、寄せ書きにメッセージを書きあって解散した。僕は、同じ組だった一人の子が気になり、帰り際にメッセージを伝え、連絡先を聞いて別れた。決して美人という子ではないが、家庭的でホスピタリティがある雰囲気をまとっている。聞くと、小学校の先生をしているという。

僕らは、三か月位付き合ったのだが。最終的には声をかけた僕の方から別れを告げることになった。


好きになった対象に対し、自分から気持ちが覚めてしまうという事は、後にも先にもこの人だけなのだが。その子はいつも会うと「自分のような人と付き合ってくれるということがとても信じがたい。いつか別れが来るのでは?」というようなネガティブな言葉を何度も口にした。

最初は、意にも解さず僕はそういう人間ではない。安心してよ・・と言っていたのだが、何度も何度も言われているうちに、なぜこの人は自分のことを信じてくれないのだろうか・・との思いが頭の中にもたげ初めてしまった。うちに気が付くと、自分の中に赤色の気持ちがすっかり薄れてなくなってしまっていることに気が付いた。僕は、彼女に気持ちを話し、付き合いは終わりを告げた。


僕が、彼女と付き合い始めたころ。沖縄から帰った3週間後の頃だっただろうか。職場に耳慣れない声の電話がかかってきた。聞くと、沖縄で一緒だった商社で働くHさんだった。声の感じからして、相当に熟慮したうえでかけてきた調子が分かる。とくに彼女になにか働きかけを行ったわけではないのに、どうしてだろう・・


そういえば、お互いにメッセージを寄せ書きした時に、僕は彼女のノートに「これが最初のステップですね」と書いたことを思い出した。僕としては、スキューバダイビングのライセンスの意味で書いただけで、なんの他に気がなかったのだが・・確かに別の意味に捉えられてもおかしくはない。悪いことをした・・


相手の心という池の中に、投げ込む言葉。何気ない小さな言葉が、アクセルもかければ、ブレーキにもなる。それが、スキューバライセンスと同時に僕が学んだことだった。