Homare's Diary

組織人事コンサルタントの徒然日記です

バージンブレイク

一世紀にわたる伝統的エンターテイメントを支える事業会社の人事制度再構築に一緒に携わっている彼女。社長向けの報告を控え、追い詰められた顔をしていた。


もともと俯瞰してモノを捉える視点や構造化をする力に課題がある。加えて、極度の心配性であり自己肯定感が必ずしも高くない。


そうした中で始めての人事制度構築プロジェクトであり、不慣れなエクセルワークを多用する賃金制度設計が中心。一つ一つが手探りで、不安がつきまとう。細かなところに凝着する視点は、俯瞰してみれば気がつく整合性や些細なミスをことごとく見逃してしまう。性格的な弱さと経験、スキルの薄さがむき出しになる。


彼女はこうしたテーマのプロジェクトにアサインされることを志望していた。ただし、スキルセットの問題もあり、希望はなかなか構わず漸くに叶ったのだった。それなのに、思ったように貢献ができない。それどころか、前に進めるための足手まといになっている。責任感の強い彼女としては自分の不甲斐なさが許せなかった。


会社の未来を僕らに預けてくれたクライアントがまず第一。僕は厳しく彼女にフィードバックせざるを得なかった。一方で、彼女のメンタル的な脆さは想像以上だった。苦悶に歪んだ表情を見せ泣きじゃくってしまう。ストレッチゾーンがほとんどなく、いきなりパニックゾーンになるのだ。潰れてしまっては元も子もない。


いざとなれば全部僕が巻き取ることを覚悟し、ギリギリのところまで負荷をかけていく。足りない視点やスキルにも肌で気づいてもらう。まだまだ若いから。


社長プレゼンの資料の最終化とプレゼンはさすがに彼女には荷は重いと判断し、僕が巻き取った。横には、恐怖から解放された安堵をチアノーゼのような表情の中に浮かべる彼女がいた。


社長は方向性と考え方に大満足。プレゼンは成功だった。新婚ばかりの彼女だったが、今回は大阪でおいしいものでも食べようか…と誘うと乗り気だった。一昨日のW嬢と同じように生まれ育ちや学生時代の転機、恋愛経験などを語り合った。


一つわかったのは、彼女は失敗を極度に恐れる性格であり、これまでは大きな失敗や挫折をしたことがないということ。恋愛経験もほとんどないし、ましてや失恋体験もである。失敗や不確実性に立ち向かう免疫がない…違う意味でのバージンということ。


時間をかけてでも彼女を社会人…そしてコンサルタントとしてのバージンブレイクをさせていかないといけない。それができなければ、彼女が望む他者貢献はとてもできない。もちろん、彼女が恐怖に打ち勝たないと難しいのだが。