Homare's Diary

組織人事コンサルタントの徒然日記です

創業者が紡いだ言葉

去年の同時期、僕は2日に渡り国会図書館で調べ物をしていた。クライアント企業のダイバシティ経営を推進する上にあたって、創業者の理念と符合する言葉を見つけるために。

 

米国社会における差別や格差を前提とした中で生まれたダイバシティ。創業者が言っていたのは、そんな対立概念を前提とした中で出されたものではない。もっと水平的に、人間そのものの存在と可能性を信じる思いから出されているものに違いない・・その証左となる、もっと明快で強い言葉が欲しい。自分たちの会社は、創業以来ダイバシティを実践してきた会社なのだ・・と。

 

創業者が理念を打ち出した時の原風景を頭に描いてみる。時は戦後、地方に工場を置いた中で貴重な労働力となったのは、東北、北陸などを出身とする中卒の女性たちだった。そう・・ドラマ『ひよっこ』の情景だ。

 

彼女たちは、優秀で忍耐強い。そして、明るさを持っている。彼女たちの力を活かせば、地方に立地する不利は有利に変わる・・寮を作り、学校に行けない彼女たちのために高校を作った。そして、デパートのように綺麗なトイレを備えた工場建屋にした。

 

頭においていたのは、独立自尊、全員参加、全員平等の経営理念だったのだろう。その概念は、今のダイバシティの先を越すものなのだ・・と。

 

国会図書館は、昔から好きな場所だ。いつも行くと、大学時代に卒論に取り組んでいた時のことを思い出す。その時も、ある会社のDNA探究するテーマだった。静謐な空間に身を置いて、探し物をする・・ワクワクする時間。

一度に手元に寄せられる冊数は3冊。創業者は、多くのインタビューに答え、本も何冊も書いている。これは・・と思えるような言葉にはなかなか巡り会えない。でも、目を通すせば通すほどに、偉大な哲学者としての姿が浮かび上がってくる。そうして、2冊の目に留まる書籍とセンテンスが見つかった。僕が追い求めていた言葉・・そして、その内容をクライアントの方に共有させてもらった。メンバーの方々は、未だ読んだことが無かったようだ。

 

後日、クライアントメンバーの方との打ち合わせ。僕が長らく付き合っているリーダーの方が、冒頭に話を切り出してきた。

 

『あなたが挙げてくれた2冊の本は、私が大学3年のゼミで研究していた時に読んでいた本なのです。私は、この2冊の本を読んでこの会社に入ろうと決めた、いうなれば人生を左右した本なのです。その事を、久しぶりに思い返させてくれました・・』

 

見ると色褪せた2冊の本を携えている。僕が国会図書館で見つけた2冊の本と同じものだ。僕はなぜこの人と一緒に仕事をしているのか。その理由が一つ分かった気がした。