Homare's Diary

組織人事コンサルタントの徒然日記です

ヒーローズ・ジャーニー

英雄の旅を巡る神話は、形こそ違ってもあらゆる文化圏に存在する。それは程度の差こそあれ、誰もが納得のいく自己変革プロセスだ。(ロバート・E・クイン ディープチェンジ)

 

一般に「神話」には「事実でない」というニュアンスがあるが、そこには、物事を意味づけし、その本質に光を与える役割もある。また、神話においては、細部が違っても、根底に流れるメッセージが共通しているものもある。そこに描かれているものは、個人の覚醒と集団の再生の旅である...

 


英雄の旅は、個人の変容、言い換えれば自我の変化のプロセスだ。この旅を始めるためには、予測のつく世界を飛び出し、勇気を持って未知の世界に踏み込まなくてはならない。そこには数々の囮穴が潜んでいて、様々なものを失う危険が待ち受けている。それまでに経験のしたことのない問題にも次々と直面し、新しい発想でモノを考えなくてはならない。しかし、目の前に現れる課題に取り組み、それを解決し続けることができれば帰還できる。古い考え方から脱却し、現在の自己を捨てることができれば道は開ける。旅を続けるとは、自己を根本からつくり変え続けること。それを通じて人は新しい思想の枠組みを手にし、「意識の拡大」を経験する。自分を変えられれば、周囲への影響力も強まっていく。そして、自分自身にとっても、組織やコミュニティにとっても価値のある存在になっていく。

 


不確実性と変化に絶えず悩まされる今日の世界では、多くの人が不安に苛まれ、予測可能で安定したものにすがりつこうとしている。とりわけ職場では、方向性「ビジョン」を示してほしいと口にする社員は多い。彼らはそのビジョンを行動の指針とすることで、自分に与えられた裁量の範囲内で適切な意思決定をしたいと考える。彼らはまた、組織のうちと外を調和させて成功をもたらすリーダーを望む。地図のない、道の恐ろしい世界では、誰かに導いてもらいたい。しかし、ほとんどの人はその期待を裏切られ、今度は一転して激しい幻滅を抱く。


その一方、自分自身に対して同様の高い基準を課す人はめったにいない。自分自身に力を注ぎ、自分が組織に力を与えるべきだと考えないのだ。


ただ、不確実性と変化の激しい時代において、人が取るべきことは唯一つ。神話が教えてくれているように自己変革のための内なる旅、勇者の冒険に乗り出すこと。その旅を通じて、パラダイムを変え、新たな自分を手にする。ただし、冒険には試練がつきまとう。一方で、恐れを振り払い勇気を持って道を歩く勇者には支援の手も伸びる。それこそが、自己においても集団においても生きる道であったりする。


そして、賢者の石というものがあるのなら。それは外にあるのではなく、自分の中にあるもの。だから、『開発』は門の中にある「仏」を開くという意味の熟語であるし、Delopmentは、覆い(Velop)を取り去る(De)という意味になっているのだろうね。