Homare's Diary

組織人事コンサルタントの徒然日記です

不毛な『働き方改革』のメカニズム

今盛んに行われている『働き方改革』について、僕はとても否定的である。ではなぜそう思うかを考えてみたい。


③生産量 = ①投入時間 ✖️②生産能力
②生産能力= ④動機 ✖️ ⑤能力

 

業務のやり方、会議の進め方を効率化し、無駄な時間を減らせば生産量が上がるというのは、生産量に直結する正味の「①投入時間」を増やしましょう というアプローチ。

 

でも、ホワイトカラーの生産性を向上させるには、「①投入時間」の改善を行ったところでたかがしれている。大事なのは「②生産能力」領域の向上を図ること。だが、世の中の『働き方改革』というのは、『①投入時間』改革の議論ばかりを行っている。跋扈するコンサルタントもこの領域ばかりである。


「②生産能力」を向上させるには、職務に対して動機(情熱)と能力(適性能力、コンピテンシー)を持った人間を配置するのが本命である。リモートワークやBPRを行う業務改革コンサルタントの出る幕ではない。組織開発や能力開発をうたう研修事業者の出番でもない。


そもそも、適性の無い職務に配置して、後から情熱をもって能力を発揮しろだなんて、無理な相談なのだ。上司のマネジメントの問題でも教育研修の問題でも無い。これは相当の割合が、採用段階で排除すべき問題なのだ。


欧米では、職務に準じた採用を行っている。採用の権限は、現場のラインマネージャに与えられている。その上で、適性能力、コンピテンシーアセスメントが面接に併用されている。信頼性、妥当性の高いアセスメントを用いれば、面接での評価エラーはかなり抑えていくことが出来る。


先日、Savilleアセスメントの研修を受ける機会があった。Savilleは、英国発で欧州では極めてメジャーなアセスメント。適性能力、コンピテンシー、職業能力とカバーする範囲も広い。コンピテンシーにおいては、多面観察データと照らし合わせた信頼性も非常に高い。


コンピテンシーアセスメントの結果から分かるのは、職務との相性だけではない。将来の伸びしろ、既存チームメンバーとの補完関係の有無すらも分かる。(もちろんメンバーもアセスメントされていることが前提だけど)


日本でアセスメントといったら、新卒採用時のSPIが関の山。しかも、総合職という曖昧模糊とした職務での採用だから、判断で使っているのは知能と性格だけ。ちなみに、欧州では採用試験に性格検査を行うのは倫理違反。(性格は、採用の基準に用いてはいけない)


採用時のアセスメントの活用やアセスメントの内容を見るだけで、科学的アプローチを随所に使っている欧米と日本の差を感じざるを得なかった。ソフトバンクのAIにエントリーシートを診断させるなんて論外である。テクノロジーの使い方が根本で間違えているのだ。


もちろん、アセスメントで入り口時点で可能性を排除する事へのリスクはある。だが、適性の無い人に仕事をやらせてみて覚醒する可能性との比較論で考えなくてはいけない。


そもそも、今の投入時間だけを論点にする働き方改革は、不毛だしいい加減に止めて欲しい。まず、総合職という得体の知れない職種をなくし、採用と配置を改革する。

 

能力の適性や情熱を持った人間においては、アイドリング時間であってもそれは価値に繋がる時間なのだから。